Thursday, February 4, 2021

2021年最初の敵対的TOB、日本製鉄に対して東京製綱が「反対」表明 - M&A Online

2021年最初の敵対的TOB、日本製鉄に対して東京製綱が「反対」表明

東京製綱にTOBを実施中の日本製鉄(東京・丸の内)

2021年に入り第1号の敵対的TOB(株式公開買い付け)が勃発した。

東京製綱は4日、日本製鉄が同社に実施中のTOBについて、反対意見を発表した。大株主の日本製鉄は所有割合を現在の9.91%から19.1%に引き上げを目指しているが、東京製綱が反対を表明したことで敵対的TOBが確定した。

日本製鉄は発言力を高める狙い

東京製綱は「株主を含む当社のすべてのステークホルダー(利害関係者)の共同の利益に対して将来的に影響を与え続ける」などとし、すでにTOBに応募した株主に契約の解除を要請している。

日本製鉄は1株1500円を提示し、1月22日から買い付けを始めた(~3月8日まで)。東京製綱の業績が低迷していることから、株式を買い増して同社経営への発言力を高めることを狙いとしている。これに対し、東京製綱はTOBが事前に何らの通告や連絡がなく一方的に開始されたとして反発する姿勢を示し、敵対的TOBに発展する雲行きだった。

東京製綱が本社を置くビルで(東京・京橋)

「敵対的」昨年は13年ぶりの高水準

敵対的TOBは2020年に5件を数え、2007年と並ぶ13年ぶりの高水準となった(一覧表)。対象企業の賛同を得ずに行われる敵対的TOBは2007年を境に以降、年に1件あるかどうかのペースで推移してきたが、2019年に3件とにわかに動意づいた。

その引き金となったのが同年1月の伊藤忠商事によるデサントへの敵対的TOBだ。大手企業同士が争うのは実に2006年の「王子製紙VS北越製紙」事件以来だった。 

とりわけ今回のケースは日本製鉄を頂点に業界秩序が重んじられる鉄鋼業界で、しかも日本製鉄自身が仕掛けた側とあって驚きが少なくない。日本企業の多くが敵対的TOBについて企業の信用やイメージが悪化するとして否定的にとらえる傾向にあったためだが、こうしたレピュテーションリスクが以前に比べ小さくなったことも事実で、敵対的案件の増加につながっている要因と見られる。 

◎2020年:敵対的TOBの一覧

公表月 公開買付者 対象企業 結果
11月 ストラテジックキャピタル 京阪神ビルディング 不成立
7月 コロワイド 大戸屋ホールディングス 成立
2月 META Capital 澤田ホールディングス 進行中
1月 前田建設工業 前田道路 成立
シティインデックスイレブンス 東芝機械(現芝浦機械) 不成立

TOBは成立の公算大か

東京製綱はエレベータやロープウェー、クレーンなどに使われるワイヤロープ最大手。日本製鉄とは長年、主要原料の線材を調達している関係にある。

東京製綱は日本製鉄がTOB後の所有割合を20%をわずかに下回る水準とどめ、持ち分法適用関連会社としないことについて、「サプライヤー(原料供給者)としての利益を追求するおそれが将来にわたって継続する」などと懸念を示している。

4日の東京製綱株価の終値は前日比22円高の1353円。日本製鉄の買付価格1500円を下回っており、現状の水準で推移すれば、TOBが成立する公算が大きい。

文:M&A Online編集部

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