2013年11月登場のミドルSUV「トヨタ ハリアー」は、6月17日に次期型が登場する予定となっており、普通なら販売台数が落ち込む時期である。
しかし、現行ハリアーは2500台という販売目標台数に対し、2020年1~3月までの平均販売台数は約2300台とモデル末期とは思えない堅調さを保っている。
2020年3月の販売台数を見ても、スバル フォレスターや日産 エクストレイルなど強豪ひしめくミドルクラスSUVのライバルと、ほぼ同等だ。
なぜ、ハリアーがモデル末期でも売れるのか。
文:永田恵一
写真:TOYOTA
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消滅するはずだったハリアーの命運

もともとハリアーは、北米を中心にレクサスブランドで販売され、「乗用車をベースとした高級SUV」のパイオニアとなった「RX」の日本仕様として1997年に登場。
ハリアーは2003年に2代目モデルに移行し、2005年には3.3L・V6+モーターにリアもモーターで駆動、ハイパワーハイブリッドの先駆けとなった「ハリアーハイブリッド」も追加された。
2005年から日本でもレクサスブランドが開業し、2009年にはレクサス RXの導入が始まり、ハリアーは2代目モデルをしばらく継続販売した後に姿を消す予定だった。
ところが2代目ハリアーは、もともとがレクサスで販売されるモデルだけに、インテリアなどのクオリティが高く、ブランド力のある高級SUVながら270万円程度から買えるというコストパフォーマンスの良さを主な理由に、レクサスRX登場後も月500~1000台という堅調な販売が続いた。
「ならば」ということで絶版から継続と一気に状況が変わり、現行型ハリアーはSUVとしては珍しい日本専用車として再出発することになった。
競合SUV比で光るハリアーの売れ行き

現行ハリアーは、当時ミドルクラス以上のトヨタ系FF車に幅広く採用された新MCプラットホームを使い、FFと4WDの2Lガソリン+CVT、2.5Lハイブリッド(4WDのみ)というパワートレーンを搭載。
2017年6月のビッグマイナーチェンジでは6速ATと組み合わされる2L直4ターボエンジンの追加や自動ブレーキ&運転支援システムの性能向上などが行われ、2017年9月にはトヨタのスポーツブランドである「GRスポーツ」が加わり、現在に至る。
現行ハリアーの本格的な販売が始まった2014年からの主なミドルSUVの販売台数を【表】にまとめてみた。
【表】を見ると、2019年に復活したRAV4の大躍進や主要なミドルSUVはどのモデルも堅調に売れている点などが目につく。なかでもハリアーとエクストレイルは2013年登場の古いモデルながら、堅調な販売が続いていることには特に驚かされる。
ハリアーはなぜモデル末期でも売れる?

ハリアーというクルマは、エクステリアやインテリアといった見た目は後述するとして、クルマ自体に「運転して楽しい」とか「乗り心地がよくて快適」、「自動ブレーキ&運転支援システムが進んでいる」といった目立つところはなく、ライバル車に対するアドバンテージは特にない普通のクルマである。
それにも関わらず、モデル末期でも売れる理由を考えると、以下の3つが浮かぶ。
【1】ブランド力の高さとスタイルの良さ
ハリアーは初代、2代目モデルが成功を収めたこともあり、現行モデルの車格は下がったものの、「あの高級SUVのハリアーね」という認知度やブランド力は高いものをキープしている。
また、スタイルが2代目までのハリアーを思い出させるところがある点もプラス要素になっているように感じる。
【2】ゴージャスなインテリア
現行ハリアーは見える合成皮革を貼り、木目パネルも使ったダッシュボードを採用。また、マイナーチェンジ前の「エレガンス」グレードで目立ったキルティング生地を使ったシートなど、ゴージャスに見えるインテリアがクルマ全体のハイライトだと思う。
よく見れば「合皮を貼ったダッシュボードの素地はどうなっているのだろう」とか目立たない部分のプラスチック部品のクオリティはそれほど高くないなど、「本当に高級とかゴージャスなのだろうか?」と疑問を持つところもある。
しかし、クルマというのは基本的に大衆商品であり、そこまで細かいことを気にする人は少ないことも事実で、スタイルやブランド力を理由に現行ハリアーに興味を持った人が、あのインテリアを見ればトドメを刺されてしまうこともよく分かる。

【3】2Lガソリン車の存在
予算がタップリあるのなら、ベストな現行ハリアーは、2.5ハイブリッドだろう。ただ現行ハリアーハイブリッドは現在、384万4500円からと高価である。
しかし、2Lガソリン車であれば、現行ハリアーに求めたい装備が揃う「エレガンス」(マイナーチェンジ前)のFFなら288万円、現在でも300万4100円からと一気に現実的なものとなる。
そのため現行ハリアーは「やや背伸びをしたローンを組んで買っている若い人が結構いる」と聞いたことがあるが、それもうなずける話だ。
この点は過去のトヨタ車の中から大人気となった2代目ソアラで例えるなら、「ベストな2代目ソアラは3L直6ターボだけど、自動車税も含め高い。それが2Lツインターボなら全体的に現実的になる」というのとソックリな気がする。
かつてのマークIIに近いハリアーの立ち位置

最近はアルファード/ヴェルファイアが、現代のクラウンのひとつの形になっているところがある。
ハリアーは、それをかつて一世風靡した平成初期までのマークII三兄弟の現代版に置き換えたような存在なのではないだろうか。
そのため筆者は現行ハリアーの2Lガソリン車を「あれは昔のマークIIで量販グレードだった一番スタンダードなグランデみたいなものだ」と思っている。
このことを考えると昨年マークXが生産終了したのは、マークII&マークXのポジションが、完全にハリアーに移行した象徴のようにも感じるところがある。
また、ハリアーは、トヨタの日本人好みのクルマを造る上手さを感じさせる。
筆者はミドルSUVの原稿を書くたびに「ゴージャスなハリアー」とよく書くのだが、300万円越えの高額車はそんなことを思うような強いキャラクターを持つことの重要さを痛感させられたモデルだ。
ハリアーは成功したクルマだけに、次期ハリアーも現行モデルの乗り換えやまだハリアーを手にしていない人に向けた現行型を正常進化させたフルモデルチェンジを行えば、成功はほぼ確実なのではないだろうか。
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April 12, 2020 at 05:00AM
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