
『物語 現代経済学―多様な経済思想の世界へ』(中央公論新社) 著者:根井 雅弘
◆学問栄えて現実分析滅ぶ
アメリカの大学院教育は世界でもっともすぐれているといわれている。体系的教育という点では、社会科学のなかでは経済学が断トツの位置にある。ところがアメリカ経済学会から出された大学院の経済学教育の問題点をまとめた報告書(1991年)には、こう書かれている。テクニカルなものの習得に重点を置きすぎて、現実の経済問題への関心や経済問題のありかについての直感的洞察力の開発がなおざりにされている、と。教育や学問栄えて現実分析滅びるという危惧(きぐ)が指摘されているのである。
本書はこうした事態を経済学会において消費者主権や完全競争モデルを前提とする「正統派経済学」(新古典派系)が制覇してしまったことによるとする。「正統派経済学」の始祖であるマーシャルやワルラスには非経済的要因への十分な配慮があったのだが、学問としての経済学の洗練のなかで、非経済的要因を不純物としてそぎおとした結果であるという。だからファンの多いガルブレイスの経済学は「異端」として経済学として認められないことが生じる。ガルブレイスの書物は、問題解決の書ではないにしても、すぐれた問題提起の書物だと著者はいう。経済学は社会学や心理学などの他の領域から異質な要素を取り入れること、つまり「他者の介在」によって豊かになるだけでなく、現実への深い洞察も得られると強調されている。
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April 09, 2020 at 01:00PM
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相対化を忘却した現代の経済学への警鐘 (2020年4月9日) - エキサイトニュース - エキサイトニュース
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