1991年にサンライズ制作のテレビアニメとして、日本テレビ系で放送された『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』。F1をはるかに凌ぐスピードと性能、そしてAIによるサポートなど最先端テクノロジーを取り込んだマシンで競う次世代のモータースポーツ “サイバーフォーミュラ” を舞台として、主人公、風見ハヤトの成長を描いた本作は、来年2021年で放映30周年を迎える。
そんな記念すべき年の直前となる今年、デジタル・リマスタリングBOX SETシリーズとして『新世紀GPXサイバーフォーミュラSOUND TOURS - ROUND 1 - ~ORIGINAL SOUND TRACK COLLECTION~』が、いよいよ3月25日(水)に初回限定生産で発売される。
第一弾のリリースとなるのは、オリジナル・サウンドトラックとして発売されていたCD全5タイトルをボックスセットとして収録したもの。本作『サイバーフォーミュラ』をはじめ数々の人気作品のキャラクターデザインを担当した吉松孝博氏による描き下ろしイラストを外装にあしらったほか、監督を務めた福田己津央氏、当時多くの楽曲の作曲/編曲を担当した大谷幸氏、そして作曲家の小西真理氏らのロングインタビューも掲載されるなど、まさにファン必見の内容となっている。
そしてもうひとつ、注目したいポイントが、今回のボックス・セット化にあたってデジタル・リマスタリングされたサウンドだ。本作を担当したのは(株)ポリスター 編成部 プロデューサーの中澤亮司氏、そしてJVCマスタリングセンターのマスタリングエンジニアの小林良雄氏というコンビ。両氏は2018年に結成30周年を迎えたアイドルデュオ、WINKのリマスターUHQ-CDも担当し、その練り上げられたサウンドで高い評価を獲得したことは記憶に新しい。
そんないわばゴールデンコンビの手によって30年近くの時を経て蘇る『サイバーフォーミュラ』を彩った楽曲たちは、どのような輝きを見せるのか。発売までの背景とともにそのこだわりをお聞きした。
■長らく人気を集めるなかでの待望のデジタル・リマスター
そもそも『サイバーフォーミュラ』の世界のメイン舞台は、2015年〜2023年。今年2020年は物語の「中盤」にも当たる年で、主人公の風見ハヤトが4年ぶり3度目のワールド・チャンピオンを獲得する年でもある。まさに物語の渦中である今年、初めてボックス・セットとしてリリースされるにいたった理由はどのようなものだったのだろうか。
中澤「サイバーフォーミュラのテレビシリーズが放映されたのが1991年。来年が30周年となるわけですが、実はいまでもその人気は持続しています。サイバーフォーミュラの製作元となるサンライズは、映画館を一カ月くらい貸し切って毎年夏に「サンライズフェスティバル」というイベントを開催しているんですが、シティーハンターやガンダムシリーズのような人気作品が名を連ねる中で、二曜日くらいサイバーフォーミュラの枠が設けられて、上映に加えトークショーをやったりするんです。これがいつもソールドアウトするほどの人気で、かつコスプレをして来場いただくお客様もいたりとその盛り上がりは相当なものです」
「サイバーフォーミュラは、テレビでの放映は9カ月ほどだったんですが、そのあとOVAが4シリーズ出ています。さらには玩具メーカーの模型なんかも発売されていて、これがまた人気が高かったんです。いまや日本だけではなくて海外でもすごい人気があったりと、ずっと盛り上がりをキープしていたということが大きなポイントでした」
サイバーフォーミュラにはTVシリーズとOVAシリーズとなる『11(ダブルワン)』、『ZERO』と言ったシリーズがあり、テーマ曲やサウンドトラックなど全26タイトルの音源をデータム・ポリスター/ポリスターからリリースしていた。アニメ作品そのものが高い人気をキープし続けるなかで、唯一世に出ていなかったのが、最先端の技術で蘇らせたリイシュー音源。その意味でも今回のボックス・セットは、まさにファン待望のデジタル・リマスタリングと言えるだろう。
■「DATマスターか? CDマスターか?」の判断から始まった
今回のデジタル・リマスターにあたって、いわゆるマスター音源となったのはDATだったそうだ。このマスターからいかにしていまの水準で聴いても遜色のない音源を作りだすのか。そこには多くの試行錯誤があったという。
中澤「サイバーフォーミュラがリアルタイムだった1990年代前半であれば、DATマスターというのは決して不思議ではない話なんです。でも、問題はそのテープの状態が分からない。だから一度このDATをオーブン焼きしてWAV化した上で、マスタリングを担当する小林さんにお渡ししました。もちろんDATのほうが遥かに良いのは予測できるんですけど、マスターに関しては実際に流通していたCDをマスターにするのか、DATマスターにするのかということを、まず検証してもらって判断いただいたんです」
「そんなところからのスタートだったんですけど、実はこのディスクの1枚め、2枚めにあたるテレビシリーズの時代の音源には想像以上に苦戦させられましたね」
音楽制作がデジタル化されて間もなかった1990年。当然のことながらいまの水準で聴くと当時の技術の限界を感じさせるものだったり、さらには少ない時間で作業を進めたことが予測できるようなラフな仕上げを目の当たりにすることも多かったという。
小林「確かに大変な作業とはなりましたが、マスタリングの進め方そのものはいつも通りコンプレッサーを選ぶところからスタートしました。流れとしては先端にリミッターを入れてコンプが入って、そしてEQ。この3つがベースであることは変わっていません。マスタリングそのものは44.1kHzで動かしています」
中澤「とにかくマスターそのもののクオリティが、曲によって違ったんです。それを高い水準に持っていくことが今回の大きなテーマでもありました」
■「バンドサウンド」の魅力を引き出したかった
そんな苦戦を強いられた今回のデジタル・リマスタリングにあたって、キーワードとなったのが「バンドサウンド」だ。
小林「サイバーフォーミュラの音源はオリジナルからバンドサウンドで収録されています。しかし、時代の限界もあってかバンドサウンドならではの厚みが出てきていなかったんです。歌ものは音の線も細かったので、大変でしたね(笑)」
中澤「まずは当時シングルとしてリリースされていて、2020年3月6日に先行配信リリースをすることに決まっていた、テーマソング2曲を最初にリマスタリングしていただきました。小林さんがおっしゃったとおり、声質そのものにちょっと癖があって、そのうえ音の線が少し細かったんです」
「そこで “もう少しヴォーカルの下の帯域あたりを補ってもらえると、もっと声のふくよかさが出てきたりしませんか?” と。そもそもリズム隊もG GRIPっていうバンドの演奏なんですけど、いまの技術だったらもっとバンド演奏らしく聴こえるはずなんです。そんな部分を今回も小林さんが見事にやってくれました。オリジナルと比べてもかなり完成度が上がっています。2020年バージョンにふさわしい出来だと、個人的にも満足しています」
小林「とはいえ、中澤さんからいくつかいただいたリクエストを聞きながら、“本当にそんなことできるかな?” と思いながらやりました(笑)。実は音の狙い自体は、基本的にWINKの時と同じです。古いデジタルマスターの音源で感じる特有の “痛い音” の部分を絞って柔らかくすることをしています」
「あとはオリジナルの音のCDと比較しながら、オリジナルで聴けた音に関してはそのまま残す。つまり、 “ある音はいじらない” という方針で進めていて、あくまで足りないところや出過ぎたところを補という質的な面を重視してマスタリングしている点もいつもと同じです」
あくまでマスタリングにおける姿勢についてはしっかりとしたポリシーを持ちながら、いまだからこそ聴けるサイバーフォーミュラのサウンドとするための工夫やアイディアを随所に凝らしながら進めたということだ。そんな小林氏のマスタリングにとって、マスタリングに使うシステムは特に大事な存在である。
実はWINKの時から少々アップデートを施したそうで、アナログコンプをはじめ、デジタル機器であるDAコンバーター、そしてクロックもオヤイデの電源ケーブルに変更したという。もちろん、ケーブルを交換するとメーカーが志向する音の方向に変化すると小林氏は話すが、今回のアップデートによって「よりいまの音楽製作の水準にあった音の方向でジャッジできるようになりましたね」と小林氏は振り返る。
■あくまで音楽として捉えてマスタリングを進めた
いまでこそアニソンといえば、音楽シーンのメインストリームを走る人気ジャンルだが、91年当時はまだまだ黎明期にあった。実際、今回のブックレットを製作するにあたり各方面にインタビューを行った中澤氏は、次のように話す。
中澤「当時はいわゆる “アニメーションテーマソング” とかそういう扱いで、まだまだマイナーだった。だから音の成り立ちもそうだし、昨今でいうところのアニソンとは全然違います」
「実はマスタリングの作業は、ブックレットに掲載する福田監督とか作曲家の大谷幸さんの対談などが終わったあとに入っていったんです。そこで聞いた話なんですけど、いまのアニメは『第何話のこのシーンで、15秒間か20秒間』というように、より具体的な発注があるそうです。でも当時はそういうのではなくて、例えば『悲しい曲』とか『レースのアニメだからね』、『主人公がちょっと落ち込む感じ』、『その恋人が嬉しいとき』とか、イメージだけで曲を作っていたみたいです。つまり音楽的なエッセンスの注文があって、それをイメージして譜面に落としていったとおっしゃっていました」
「その話を聞いたので、あくまで完全に音楽として捉えて小林さんにマスタリングを進めてもらいました。そういう音楽を重視して進めた部分も、ぜひ聴いて楽しんで欲しいなと思います」
2020年。物語の世界とシンクロするこの時代に、現代のテクノロジーを駆使して生まれたサイバーフォーミュラ初のデジタル・リマスタリング音源となる『新世紀GPXサイバーフォーミュラSOUND TOURS - ROUND 1 - ~ORIGINAL SOUND TRACK COLLECTION~』。現実の世界はまだまだアニメの世界に追いついていない部分もあるが、少なくとも音楽の世界は当時の想像を遥かに超えたポイントまで進化を遂げている。そんな技術のレースに勝った懇親の楽曲たちをぜひ、このボックスセットで堪能して欲しい。
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March 25, 2020 at 11:30AM
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『新世紀GPXサイバーフォーミュラSOUND TOURS』制作秘話―現代の水準だからこそ聴ける「バンドサウンド」(PHILE WEB) - Yahoo!ニュース
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