昨年12月、地球温暖化対策を話し合う国連の会議(=COP25)に出席するため、アメリカ東部からヨットで出航し、ポルトガル・リスボンに到着した環境活動家、グレタ・トゥーンベリ。Photo: CARLOS COSTA/Getty Images
2014年以降、世界の平均気温は上昇し続けている。そして、その原因である温室効果ガスの排出量も依然として増え続けていることが、昨年11月に発表された国連の報告によって明らかとなった。しかし、温室効果ガス排出量の抑制に必要な対策が、遅々として進んでいないのが現状だ。
「過去10年を振り返っても明らかなように、これまで私たちは多くの時間を無駄にしてきました」
イギリスのイーストアングリア大学の気候変動科学の教授であるコリーヌ・ルケレは、そう述べる。彼女はまた、産業革命前から専門家らが考える、気温上昇を1.5°Cに抑える目標はさらに手の届かないものになりつつあると危機感を募らせる。
「気候変動に対処するには、温室効果ガス排出量をゼロにする必要があります。けれど、現在も10%近く上昇し続けているのです。私たちは正しい軌道に乗るどころか、より遠ざかっていると言えるでしょう」
気候危機への対処の失敗が次々に明らかになる中、昨年は何百万人もの人々が街頭で抗議デモを行った。17歳のスウェーデン人活動家、グレタ・トゥーンベリもその一人だ。彼女は昨年12月にマドリードで開かれた、国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)でこう述べた。
「ここに勝利など存在しません。私たちが見たいのは、実際の行動です。私や仲間は多くのことを成し遂げてきたと自負していますが、ある視点から見れば、何ひとつとして達成してなどいないのです」
対応の遅れは取り戻せるのか?
アルゼンチン・サンタクルス州の南西にある世界自然遺産、ロス・グラシアレス国立公園は、最大規模の氷河がある氷河地帯。NASAの報告によると、地球温暖化の影響を受けて速いスピードで溶け出している。Photo: David Silverman/Getty Images
気候変動は新たに発見された現象では決してない。1988年にアメリカ議会で温暖化の証拠を提示したジェームズ・ハンセンのような科学者たちは、30年以上にわたり、温室効果ガスの排出による危険性を警告してきた。そして、それを機に、人間活動が世界の気温上昇に及ぼしてきた影響を強調する、数多くの研究が発表されてきた。
2014年の政府間パネル(IPCC)の報告によると、「1950年代以降に観測された気候変動の多くが、過去数十年から数千年の間にわたり前例のないもの」と結論づけられた。カリフォルニア大学ロサンゼルス校の気候科学センターの副所長であるキャサリン・デービス・ライヒは、温室効果ガスの排出が地球温暖化を引き起こすことが明らかになってから、私たちが幾度となく行動を起こす機会を逃してきたことをこう指摘する。
「時間が経つほどに、集団的対応の不十分さが露呈しています。科学に基づいた情報が30年にわたって絶えず発信されてきたにもかかわらず、今なお最善策が見つけられていません。『いつになったら政治家たちは、状況を真に理解するのか』と、人々が苛立つのも無理ありません」
しかし、進展がまったくなかったわけではない。2018年のIPCC報告書は、気候変動の「長期的あるいは不可逆的な」影響について説明しており、産業革命前からの気温上昇を1.5°Cにとどめるには、2030年までに二酸化炭素排出量を、2010年比で45%削減する必要がある、と専門家らは警告している。このメッセージがようやく受け入れられはじめたのは、前進と言って差し支えないだろう。熱波や異常な豪雨、そして洪水などの影響が目に見えて出はじめたことで、誰もが迅速なアクションこそが急務であることに気づいたのだ。
政治は科学に耳を貸すべきだ。
南極大陸のエレファント島は、気候危機の影響で雪に埋もれている。Photo: Wolfgang Kaehler/Getty Images
気温上昇を1.5°Cに抑えるには、世界のリーダーたちによる歩み寄りが必要だ。2015年になって初めて、気候変動抑制に関する主要な国際的枠組みである「パリ協定」が誕生した。同協定は195カ国により署名され、産業革命前に比べた気温上昇を2°Cより「十分に低く」抑えるという長期目標を掲げている。
しかし、パリ協定が採択されたにもかかわらず、目標達成のために正しい軌道に乗った国はほとんどない。事実、2009年に合意の成立を目指したが失敗に終わったコペンハーゲン(COP15)のように、具体的な行動に移すための障壁はあまりに高いのだ。
さらに、仮に各国が目標を達成できたとしても、2100年までに気温は3.2°C上昇することが2017年の国連の報告書によって明らかになっている。また、昨年9月には、世界第2位の二酸化炭素排出国であるアメリカのドナルド・トランプ大統領がパリ協定の離脱を表明し、世界に衝撃が走った。続けて、昨年12月にマドリードで開催されたCOP25でも、温暖化対策の強化をめぐって各国の代表が合意に至ることはなかった。なぜ、政治家による行動に繋がらないのろうか。ライヒは次のように答える。
「科学者が政治家に訴えることはできても、選挙区民からの圧力でもない限り、政治家が実際に行動することはほとんどありません。私たち市民が代議員に要請し、活動を通じて政治力を行使しなければ、変化をもたらすことはできないのです」
グレタ・トゥーンベリ効果。
カリフォルニアで起きた山火事を鎮めようとする消防団員たち。2018年。Photo: Mark RALSTON/Getty Images
2018年8月、当時まだ15歳だったトゥーンベリが気候危機への対策を求め、たった一人でストライキを始めたのは、各国政府が科学者の警告に基づいて行動していないと気づいたからだ。彼女が始めた温暖化対策を訴える学校ストライキ「未来のための金曜日」は、ソーシャルメディアやインターネットを通じて多くの人の共感を呼び、瞬く間に世界中に広がった。このストライキやデモに参加した若者たちは100カ国以上、160万人にものぼる。
トゥーンベリはまた、世界各国の政治家が集まる2018年と2019年の国連会議で演説も行った。しかも驚くことに、昨年のサミット参加の際には、環境負荷の大きい航空機の利用を避け、大西洋をヨットで横断したのだ。さらに、世界各地に推定485の関連団体が存在すると言われる「エクスティクション・リベリオン」のような他団体ともタッグを組み、世界的な影響をもたらしている。「エクスティクション・リベリオン」のメンバーであり、ファッション・レンタル企業のハイアースタジオの設立者であるサラ・アーノルドは、トゥーンベリについて次のように話す。
「深刻な環境問題に何か光明があるとすれば、グレタを含む世界中の若い活動家たちが、非常に強く団結したことです」
手遅れになる前に。
シドニーの学生たちが気候変動への対処を訴える大規模なデモを行う様子。昨年3月。Photo: Saeed KHAN/Getty Images
気候危機が軽視され、対策が遅れ続けてきたからこそ、今すぐ行動を起こすことがこれまで以上に重要だ。アーノルドは、こう語気を強める。
「二酸化炭素排出量を目標値まで減らすためには、2020年に排出量が減少に転じなければ、手遅れになってしまいます。今が最後のチャンスなのです」
それを実現するには、政治家がより野心的にリーダーシップを発揮し、排出量の多い産業に対して具体的なアクションを求める法律を施行する必要がある。
「政府は、さまざまな産業が化石燃料から脱却する支援ができるはずです。ガソリン自動車から電気自動車に移行するなら、今すぐ、実際に市場の整備に取り掛からなければなりません」
気候危機は、いくつもの不可逆的な影響も与えるだろう。だからこそ、私たちは過去を教訓として、同じ失敗を犯すわけにはいかない。地球の未来を守るためには、現実から目を背くことなく、迅速に正しい行動を起こす以外に道はないのだから。
Text: Emily Chen
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January 23, 2020 at 07:00PM
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