近代以降の世界では、神や宗教的信仰の影響力が弱まったことで、かえって様々な問題が生じていると、日本思想史の大家・佐藤弘夫氏は言います。そんななか近年では、「カミ」的なものを現代社会に取り戻そうとする動きも見られます。
先史から現代まで、神(カミ)をめぐる想像力を通して「日本人の心の歴史」を解き明かす最新刊『日本人と神』より、現代における「神」をめぐる論考です。
先史から現代まで、神(カミ)をめぐる想像力を通して「日本人の心の歴史」を解き明かす最新刊『日本人と神』より、現代における「神」をめぐる論考です。
「カミ」をもたない共同体は存在しない
およそこれまで存在した古今東西のあらゆる民族と共同体において、カミをもたないものはなかった。信仰の有無にかかわらず、大方の人にとってカミはなくてはならない存在なのである。
わたしたちが大切にする愛情や信頼も実際に目にすることはできない。人生のストーリーは可視の世界、生の世界だけでは完結しない。
たとえそれが幻想であっても、大多数の人間は不可視の存在を取り込んだ、生死の双方の世界を貫くストーリーを必要としている。
日本人もまたカミとともに生きてきた(photo by iStock)
かつて人々は神仏や死者を大切な仲間として扱った。目に見えぬものに対する強いリアリティが共同体のあり方を規定していた。それゆえ、わたしたちが前近代の国家や社会を考察しようとする場合、その構成要素として人間を視野に入れるだけでは不十分である。
人を主役とする従来の欧米中心の「公共圏」に関わる議論を超えて、人間と人間を越える存在が、いかなる関係をたもちながら公共空間を作り上げているかを明らかにできるかどうかが重要なポイントとなる。
これまでの歴史学の主流をなしていた人間による「神仏の利用」という視点を超えて、人とカミが密接に関わり合って共存する前近代世界のコスモロジーの奥深くに垂鉛を下ろし、その構造に光を当てていくことが求められているのである。
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