
「囮囚」は現代の縮図
――「囮囚」が完成しましたが、どんな曲にしたいと考えて制作されたのでしょうか。 田邊駿一 まず、ドラマの前作で主題歌に「バッドパラドックス」を書き下ろさせていただいていたのもあり、このキャストでまたドラマの続きが見れるんだ、と想像したらすごく興奮しました。でも、逆にどうしようという不安もあったんです。続編というのはドラマでは初めてのことだったので。今回はどういうアプローチをしようかと悩みました。バンドシーンとしての新曲を出すのか、いろんなことを考えて制作を始めて。まず、僕が何曲かデモを作ったんですけど、ブルエンの次に繋がる曲にしたいというのがありました。 ――「囮囚」というタイトルも印象的ですね。なかなか使わない字ですよね? 田邊駿一 善と悪、表裏一体というのが今回のテーマでした。それはドラマのテーマでもあるんですけど、善人だった人が何かの弱さにつけ込まれて悪になってしまった、というもので。すごく広いテーマではあるんですけど、それは僕らでもありうることなんだろうなと思いました。正しいと思っていたことでも誰かを傷つけてしまっていたり、常日頃あるものだと思いました。そういった表裏一体のものをこの曲では表現していて、どういうタイトルにしようか悩みました。 最初は一文字で囮(おとり)がいいかなとか、しっくりこないなあと思い、囚人にしてみたり。でも納得がいかなくてこれを一緒にしてみたらどうだろうと、“囮”と“囚”の2文字を並べてみたらカッコいいなと感じて。“化人”でバケモノとも読めるし、そのバケモノが□の中に囲われていて身動きが取れなくなっている、それが現代の縮図みたいにも感じて。実際本当に悪い人というのはほとんどいなくて、ルールの中で悪さをしている、結局悪人やバケモノさえも囚われているんだなと。偶発的に生まれたものですけど、この物語に相応しいと思いました。 ――すごく良いのが見つかりましたね。ちなみに仮タイトルとかあったんですか。 田邊駿一 仮タイトルは歌詞に<張り詰められた蜘蛛の巣に>とあったので「スパイダー」にしていました。スタッフさんもこれでいくんだろうなと思っていたみたいで、ジャケ写も「スパイダー」のイメージで進めていたみたいで。なので、「囮囚」になって慌てたみたいなんですけど(笑)。 ――ジャケ写もかっこいいですね! 田邊駿一 ありがとうございます。CGではなくて実際に描いていただいたので、実物の絵が存在しています。触るのにも手袋をしなければいけないくらい価値のある絵画なんです。実際にあるものを写真で撮影したからこそ、この質感が出たんだと思います。 ――これは家に飾りたいですね。さて、高村さんが今回演奏するにあたってこだわったところは? 高村佳秀 今回まず僕だけ先に録りました。基本的には4人で決めたフレーズを確定してからレコーディングするんですけど、今回はプロデューサーさんにも入ってもらって、さらにブラッシュアップしながらレコーディングしていく流れで。今回は試したいフレーズもいくつかあったので部分的にも録ったりもして、何パターンも試したので最後の最後までアレンジを練っていたようなレコーディングでした。 その中ですごくこだわったところがスネアを2拍目と4拍目以外のどこに入れるかというものでした。細かいところなんですけど、聞こえないようなゴーストノートなど最後の最後までこだわってレコーディングしました。入れすぎても五月蝿くなってしまう、引きすぎてもダメで、1つの音を足すか足さないか、こだわりました。 ――グルーヴに大きく影響しますよね。辻村さんのこだわりポイントは? 辻村勇太 ベースラインはある程度決まっていたので、試行錯誤したという感じではなかったんです。曲を聴いて感じたままレコーディングした感じでした。考えたところはドラムのビートに対してどうベースを突き詰めていくか、というところでした。ベースが入るタイミングによって壮大になったり、ギュッとなってよりアッパーになったりするので、グルーヴとしての細かいせめぎ合いはありました。 ――2番で聴けるスラップ奏法はアグレシッブで盛り上がりますね。 辻村勇太 ありがとうございます。あのスラップは手ぐせに近いです。今まではそういった手ぐせのようなものは敢えてあまり出してこなかったんですけど、これからはそういう部分も少しずつ出していこうかなと思っています。 ――“辻村節”が堪能できる1曲ですね。江口さんはいかがでしたか。 江口雄也 イントロで聴けるリフは田邊がデモの段階で僕だったらこう弾くだろう、というのをイメージして考えて作ってくれていたと思うんです。それで僕の中でも全体の構成がイメージできたので、イントロのリフを中心に展開していきました。それもあってアレンジ作業はすごく早かったですし、レコーディング関してもスムーズに録れたと思います。その中で苦戦したのはミックスダウンでした。 ――バランスを取る作業ですね。 江口雄也 この曲はシーケンスフレーズが多かったので、他の楽器とのバランスを取るのが難しかったんです。シーケンスの音はこれまでアレンジャーさんに作ってもらうことが多かったんですけど、今回は辻村が全部作ったんですよ。これは初めてのことだったので、逆に考えた部分でもありました。なので、課題として残る部分もあったんですけど、この形もやり方としてありだなと思ったので、今後またどうブラッシュアップしていくのか、というのは楽しみなところでもあります。 ――新しい試みもあったんですね。それにしてもイントロのあのコード感の中でメロディを乗せるスキルがブルエンは高いなと感じました。 田邊駿一 これはもうELLEGARDENに鍛えられて身についたものですね。ELLEGARDENの「Mr.Feather」という曲ははまさにそんな感じの曲で。当時「Mr.Feather」のメロディの乗せ方について友達と論議をしたぐらい好きで、和音にとらわれないメロディというのが僕は好きなんです。 ――ちなみにドラマ『ボイス 110緊急指令室』1作目の主題歌だった「バッドパラドックス」を引き継いでいる部分もあったりします? 田邊駿一 ノリの良さというのは引き継いでいる部分かもしれません。確かにドラマが続編ということもあり、系譜にするのか、逸脱したものにするのかというのは考えました。でも、今回は逸脱したものを選びました。続編となった時は系譜を浮かべることはあると思うんです。そう考えたときにこの曲にもどこかに系譜が感じられたらいいなというのはあります。それはノリの良さにも繋がるサビの言葉の発音は「バッドパラドックス」の感覚を踏襲しているんじゃないかなと思います。 ――「ポラリス(Slushii Remix)-Sakura Chill Beats Singles」は聴いてみてどう感じました? 高村佳秀 ゲーム『Fortnite』(フォートナイト)の曲でSlushiiさんのことは知っていたので、いい意味で裏切られたリミックスでした。聴く前まですごくワクワクしていて、その気持ちのまま最後まで聴くことができました。Slushiiさんが「ポラリス」を解釈するとこうなるのかみたいな。僕らの曲ではなくてSlushiiさんの曲になっているなと思いました。 田邊駿一 僕がこれまで聴いてきたリミックス音源は、大体オリジナルよりもテンポをあげて派手になるイメージがあったんですけど、この「ポラリス」を聴いてそうではなかったので嬉しかったです。この曲は悲しい曲なんです。それをロックというもので包んで強さに変えようとしている主人公の気持ちがあって。それを憂いの部分で包んでいただけたのはすごく嬉しくて。 江口雄也 メロディがいいというのは正義だなと思いました。どんなアレンジになってもいい曲になって。オリジナルから展開やサウンドが離れていっても、良さは変わらないことは自分の中で新しい発見でした。 辻村勇太 僕はEDMも好きなのでスクリレックスを彷彿させるアレンジを聴いて感動しました。物語の展開だったり、フェイザーの使い方とか、日本語の捉え方とか面白いなって。サビじゃないところで盛り上がっているんですけど、Slushiiさんにはこういうふうに聞こえているんだなって。すごく勉強になりましたし、逆に英語バージョンでやったらどうなるのか、とワクワクした部分もあったリミックスでした。
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