江戸時代というと、私たちと縁遠い昔のように思えるかもしれないが、実は戸籍を辿れば江戸時代に生きた先祖まで行き着くことができる、案外近い「昔」といえる。私たちの祖先は、江戸時代にどのような暮らしぶりをしていたのだろうか。
『江戸のお勘定(MdN新書)』(大石学:監修/エムディエヌコーポレーション)は、江戸の物価を現代の貨幣価値に換算し、江戸時代に生きた人々の姿を浮き彫りにしている。本書は、落語「時そば」でも登場するポピュラーな値段である「そば一杯=16文=現代のそば一杯が大体500円前後」を基準にし、「1文=30円」「金1両=12万円」と設定している。
さて、江戸で暮らすためには、まず家が必要だ。本書によると、落語に登場する庶民の代表格「熊さん」が住んでいた裏長屋の月の家賃は現代で2万4千円から3万円ほど。一般的な裏長屋の間取りは間口が約2.7メートル、奥行が約3.6メートル。入口には土間があって小さなかまどと流しが備え付けられており、トイレは共同便所。もちろん、風呂はない。令和時代の物件としては狭く不便だが、家賃としては安く、魅力的だ。
給料は上がらないのに物価が上昇し続けているといわれる日本だが、子どもにかける教育費は下がらない。月額総費用は万をゆうに超える塾が珍しくない。江戸時代の塾に当たる寺小屋は、たいてい6、7歳頃になると義務ではないものの通わせ始める家庭が多く、束脩(そくしゅう=入学金)は7500円から1万5000円、月謝は6000円くらいまで。こう見ると、案外安いようにも思えるが、一緒に勉強する子どもたちに配る煎餅(必須)を自腹で用意し、五節句の時には9000円ほど、夏の初めには畳代として6000円から9000円ほど、冬には炭代・暖房費としてやはり6000円から9000円ほど、さらには盆と暮れにもいくらかなど、さまざまな出費が加算される。江戸時代には寺小屋の普及で識字率が急激に高まったといわれるが、子どもの教育にかける金額に下支えされてこその成果だとわかる。
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