ヨーロッパ人に「もしあなたがアメリカ大統領選に投票できるなら、バイデン氏とトランプ氏のどちらに投票するか」を聞く調査がある。
様々な調査会社が、何度も世論調査をしているが、決まってバイデン氏が優勢である。
最新の結果は、調査会社BVAの調査が30日(金)に明らかにした調査だろう。AFP通信をはじめ、DW(ドイツ公共放送国際放送)などの欧州メディアが報じた。
調査には、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペインのヨーロッパ5カ国の1万1000人以上が参加した。
一番バイデン氏を支持しているのはドイツ人で、66%だった。フランス人は57%だ。過半数を制している。
逆にトランプ氏に投票すると答えたのは、ドイツ人が8%で、フランス人が9%だった。1割にも満たないのだ。
またイタリア人は42%がバイデン氏に投票し、15%がトランプ氏に投票すると答えた。
ただ、これははっきりとバイデン氏を支持していることにはならないだろう。
フランス人の9%、ドイツ人の8%が、トランプ氏に「良い意見をもっている」と答えた。逆に、フランス人の大多数の83%がトランプ氏に「悪い意見をもっている」と答えている。このようにトランプ氏に対しては意見がはっきりしているのに対し、バイデン氏に対しては約半分の48%も「自分の支持をはっきりと決めていない」という。
バイデン優勢ではあるが、むしろ反トランプが強いという結果なのだ。当事国アメリカでの評価と似ていると言える。
トランプ氏を支持しない理由
ではなぜヨーロッパ人は、トランプ氏を支持しないのか。
まず、環境問題だ。
2015年、トランプ大統領は「パリ協定(2020年以降の、地球温暖化対策のための新たな国際枠組み)」から米国を離脱させるという決定をした。これは、ヨーロッパ人の間では最も支持されていない行動の一つだ。
欧州では環境保護は当然の共通課題となっており、欧州連合(EU)が環境政策を世界でリードしている。
このアメリカ脱退の動きは、欧州各国で1桁の支持しか得ていない(唯一の例外はスペインで、11%が賛成していた)。
メキシコとの国境に沿って壁を建設するというトランプ氏の計画も、同じように大変な不人気だ。
欧州では、冷戦で東と西に壁で分断された記憶がある。しかも、土地はつながっている。このあたりは日本人にはわかりにくい感覚かもしれないが、県境に壁をつくったと想像すると、近いと思う。
ヨーロッパ人は、人々を隔て隔離する壁が嫌いなのだ(でも「移民問題で必要かも」というジレンマに悩んでいる)。最も壁建設を支持している国は、EUから離脱した英国の人々で、17%の支持を集めている。それで2割すらいかないのである。
国別の詳細な調査
もう一つ、国別の詳細な調査を紹介しよう。
以下は、Europe Electsが、調査会社 Ipsosの結果を中心にまとめたものである。最終更新は10月27日となっている。
この表によれば、7割以上がバイデン氏を支持しているのは、以下の4カ国だ。
1位 アイルランド(80%)
2位 フィンランド(75%)
3位 スウェーデン(73%)
4位 ギリシャ(71%)
逆に、トランプ氏を支持が(たった)2割を超えている国は、以下の4カ国だ。
1位 ロシア、トルコ、ポーランド(27%)
4位 ハンガリー(23%)。
どこも、国のリーダーが保守的で強い国である。
一方で、「決めていない(Undecided)」が3割を超えて目立っているのは、以下の7カ国。
1位 ロシア(60%)
2位 ポーランド(45%)
3位 トルコ(43%)
4位 フランス(40%)
5位 ハンガリー(39%)
6位 スペインとイタリア(36%)
上記のトランプ氏を支持する割合が比較的高い国と、国名が一致している。
また、フランス・スペイン・イタリアと、南欧で決めていない人の割合が多いのは特徴といえる。
これはどう分析して良いものか難しい。このラテン3カ国は、決してトランプ支持率が高いわけではないし、バイデン支持率も相対的に低いほうだ。
つまり、トランプ氏は支持しないが、バイデン氏は魅力に欠け、「消去法でバイデン支持」という選択をすることに、より強いためらいを感じているーーということかもしれない。
欧州7カ国のわかりやすい調査
ちょっと古いものだが、10月8日に発表されたYouGovの調査結果も出しておこう。
イギリス、フランス、ドイツ、スペイン、イタリア、スウェーデン、デンマークの7カ国を調査したものだ。
上段の質問は「トランプの大統領としてのパフォーマンスは、どうであると思うか」
下段の質問は「もしバイデンが大統領になったら、どうだと思うか」
紫:素晴らしい、良い 緑:並み アイボリー:わからない 赤:ひどい、貧弱
調査結果に対して、YouGovは以下のように評している。
「自国との関係改善」といえば、まっさきに思いつくシーンが2つある。
1、2018年10月、G7における貿易論争。トランプ大統領は、アメリカは「皆からタカられる貯金箱」となっていることに、痛く不満だった。
上はメルケル首相のインスタグラム、下はマクロン大統領のツイートだ。
トランプ大統領に迫るように囲む、各国首脳の面々。SNSでどのような写真を各国首脳が流したかで話題をさらった。
2、NATOの会議
2017年5月、トランプ大統領は「もっと軍事費を払え」と欧州首脳に説教をした。トランプ大統領の隣で苦虫をつぶしたように立っているのは、ソトロテンベルグNATO事務総長、欧州首脳はまるで先生のいうことを聞くように並んで立っている。冒頭で押しのけられたのは、モンテネグロの首相だ。
欧州がバイデン氏に比較的好意的なのは、もともと欧州の素地からきているかもしれない。
欧州は、アメリカや日本に比べて「真ん中」の軸がかなり左寄りである。欧州の「中道左派」は、アメリカでは「極左」とみなされることが珍しくもなく、ただの中道左派を共産主義者呼ばわりする人もいる。
もともと(世界基準で見れば)欧州大陸は左派大陸であり、左派の人々は世界規模で党や団体が連帯しており、一つの組織としてつながっていたり、共に活動していたりすることも関係あるかもしれない。
一方で、「もっと支出しろ」と迫るトランプ大統領は、今までアメリカに守られるのに慣れてきた欧州にとって、耳の痛い、都合の悪い政治家だ。
これは日本と大変似ている。日本も、アメリカに守られるのに慣れきっている。中国の軍事覇権(と経済の脅威)の問題がなければ、トランプ大統領支持率は、日本ではそれほど高くなかったかもしれない。
「強力な大統領トランプ」に期待する声が日本では強いということは、日本の緊張度がそれだけ高く、欧州のほうがずっと平和であることを意味するのだろう。分裂して民主主義度が低いままの東アジアと、欧州連合を構築して集団安全保障体制を築いたヨーロッパとの違いなのかもしれない。東アジアは、50年後を見据えて、何とかできないのだろうか。
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November 03, 2020 at 08:58AM
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