戦前のジャーナリストで、手賀沼北岸の高台に居を構えた杉村楚人冠(そじんかん)(1872〜1945年)の随筆集「続々湖畔吟」が復刊され、湖畔吟シリーズ全3冊の現代表記版が出そろった。復刊に取り組んできた我孫子市杉村楚人冠記念館は、連動の企画展「随筆に書かれた我孫子のむかし」を、来年1月11日まで開いている。(堀場達)
楚人冠は関東大震災翌年の一九二四(大正十三)年、当時の我孫子町に移住。周囲の人々の様子や自分の生活風景をアサヒグラフ(朝日新聞社)などの雑誌につづり、単行本「湖畔吟」「続湖畔吟」「続々湖畔吟」にまとめて出版した。
記念館は楚人冠の作品に親しんでもらおうと、二〇一八年度以来、湖畔吟シリーズを読みやすい現代仮名遣いに改め、注解付きで再刊する試みを進めてきた。完結に当たり、シリーズの総目次・総索引を、続々湖畔吟の付録にした。
学芸員の高木大祐さんが、続々湖畔吟の中で薦める作品は、昭和初期の手賀沼の風情を描いた「晩春の花」、我孫子の小さなコミュニティーの魅力が味わえる「お仲」「村居十一年」だ。「当時の自治体の名称は我孫子町だが、楚人冠は必ず村と表現する。我孫子の人々との付き合いに心温まるものを感じ、その暮らしを大切にしていたことが分かる」と指摘する。
文中の光景のほとんどは、一世紀近い時の流れによって、失われている。しかし、例えば「早合点」という作品の書き出し部分「千葉県と茨城県とは、利根川を界にして相対していることとばかり思っていたら、ここから見て川の彼方(かなた)にも千葉県があり、川の此方(こなた)にも茨城県がある。まことにややこしい」は、現代の私たちも利根川べりで見ることができる。
一方、企画展は、湖畔吟シリーズをはじめとする楚人冠の随筆と関連する民具・道具を紹介し、農漁業、鳥猟などに焦点を当てた。続湖畔吟の「水郷夏趣」は手賀沼の「澄み切った水の底一面がさながらの草むらとなっている」として、水草の藻くずを肥料にするため、引き揚げる様子を描いており、引き揚げ用具のモクトリマンガンが展示されている。沼の名産品だったカモを捕獲する網、やはり盛んに東京に出荷されていたウナギをとらえるウナギダル、ウナギガマも興味深い。
湖畔吟シリーズは、いずれも一冊六百円(消費税込み)。記念館や市役所などで購入できる。企画展入館料は一般三百円など。問い合わせは記念館=電04(7187)1131=へ。
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