Tuesday, December 17, 2019

貧困、病気、格差、差別…骨太の社会派ミステリーで読む「現代の闇」(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース

どれもおもしろい

 今回選んだ10冊はどれを1位にしてもいい、僕にとって大切な小説です。選んでみて、改めて自分は小説に突き動かされてここまできたのだと思いました。

【写真】20年以上もヤクザを追ってきたライターが見た「裏社会のリアル」

 『華麗なる一族』は銀行合併という熾烈な権力闘争の中で現れる、男のむき出しの野心を描いています。業界ランク下位の銀行が上位を食うことはあり得ないのですが、山崎さんは綿密な取材を重ねてその可能性を見出し、リアリティのある小説に仕上げました。

 主人公の阪神銀行頭取、万俵大介の「私」の野心もしっかり描いています。何しろ妻妾同衾ですからね。その泥臭さといったらない。この小説には「公」の幹と「私」の幹があって、物語の展開の中、相乗効果でそれぞれの幹が太くなっていく。その構成が素晴らしい。

 初めて読んだのは大学生のときですが、新聞記者になって読んだときのほうがぐっときました。作家になって読んだら、もっとぐっときた。どんどん深みに気づいて圧倒され、山崎さんは自分にとって一生越えられない山だと痛感しました。

 『火車』は、名前や戸籍といった個人のアイデンティティがどれほどあやふやなのかを思い知らされました。読んだ後、隣にいる友人を、「こいつ、もしかして山下じゃないかも?」と怖くなったのを覚えています。

 消費者金融やカード破産という際どいものを扱いながら、派手な事件は何一つ起きず、浮ついた人物も登場しない。これほど重心を低くした小説を宮部さんが31歳で書かれたことに驚きますし、人間の白黒つけられないグレーの不気味さを描いているところが深い。

 刑事が犯人の肩に手を置いて終わるラストも秀逸です。公式は全てそろっていて、あとは読者がそこに数字を入れれば答えが出るという非常に気持ちのいい終わり方です。

 『レディ・ジョーカー』はグリコ森永事件を題材に、同和差別や総会屋、ブラックマネー、障害者といった社会問題に切り込んでいます。読んだとき、一つの犯罪をこういう形で書けるということに驚愕し、髙村さんは小説家の域を超えたとんでもない人だと思いました。

 僕も同じ事件を題材に『罪の声』を書きましたが、中心に置いたのは「子供」です。この一点だけは髙村さんが書いていなかったので、書けた。他は全て書き尽くされていたと言っていいでしょう。

 『オリンピックの身代金』は1964年の東京オリンピック直前の日本の状況を緻密に再現しながら、今に続く東京と地方の格差問題を追及しています。

 「日本中の幸せは東京が独り占めしている」

 登場人物の一人がつぶやくこの状況は今も変わっていません。これは資本主義の限界であり、何としてでも是正しなければならない。

 そのことに、東大でマルクス経済を学ぶ主人公が気づく。この深い計算が小説の肝です。来年にオリンピックを控え、同じように浮かれている今だからこそ、読んでもらいたい小説です。

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December 15, 2019 at 07:01PM
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