
画像提供, Reuters
欧州大陸の一部で新型コロナウイルスの感染が急増する中、イギリス政府のパンデミック策定に関わる専門家は20日、イギリスの成人がほぼ全員、新型コロナウイルスのワクチン接種を受けた後でも、夏に大勢が海外へ旅行すれば、変異株を持ち帰る危険が高いと警告した。イギリスでは現在、休暇のための海外旅行は禁止されており、帰国者には隔離が義務付けられている。
政府でパンデミック対策の科学的数理モデルを作る専門家チームに参加するマイク・ティルズリー博士はBBCラジオに対して、夏休みの海外旅行を認めれば、ウイルスに耐性のある変異株をイギリスに持ち帰る危険が高いと述べた。
政府によるとイギリスでは、7月末までに18歳以上の成人は少なくとも1回目の接種を受ける予定。
ティルズリー博士は、「普通の旅行者にとって残念ながら今年の夏の海外旅行は、きわめてあり得ないことだと思う」と述べ、「たとえば7月や8月に大勢が海外へ出かけるようになれば、本物のリスクになると思う。新しい変異株を国に持ち帰る可能性があるからだ」と説明した。
「これまでのワクチンは変異株にそれほど有効ではなく、変異株が持ち込まれれば前より急速に広がる可能性があり、これまでの接種事業の成果が損なわれたりしたら、本当に危険だ」
変異株に対抗するためには、変異株に対応したワクチンの接種事業が今後あらためて必要になるものの、「それはできるだけ先送りできた方がいい」と、ティルズリー博士は補足した。
これに対して、グラント・シャップス運輸相は、夏の海外旅行が認められるかどうか判断するには「まだ早すぎる」と述べた。
政府の現在の制限緩和行程表では、イングランドからの海外旅行は5月17日から可能になる予定。
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現在は、商用や留学など限定的な理由でのみ海外への渡航が認められている。出国する人は正当な渡航理由があることを申告しなくてはならない。
政府タスクフォースは4月12日、海外旅行の再開時期についてボリス・ジョンソン首相に報告する予定。
イギリスの航空会社の業界団体「エアラインズUK」は、2カ月半後に世界と欧州でパンデミックがどういう状況になっているか判断するのは「時期尚早」だとしながら、「5月17日から全面的に何の規制もない海外旅行がありえないのは承知している」ものの、各国のワクチン接種進展やリスクのバランスを取りながら「いずれ必要最低限の規制のもとで、海外旅行を内実ある形で再開・再建していける」はずだと期待を示した。
マット・ハンコック保健相は20日午前、イギリスの全成人の半数にあたる2685万3407人がすでに1度目のワクチン接種を受けたと報告した。19日には1日で過去最多の計71万1156人が接種を受けたという(1回目と2回目含む)。
政府非常時科学諮問委員会(SAGE)のアンドリュー・ヘイワード教授は、感染が現在拡大している欧州諸国への渡航をイギリス政府として奨励するのは「あり得ない」と指摘。タイムズ・ラジオに対して、「欧州の一部で南アフリカで特定された変異株がじわじわと高いレベルに増えている」のが特に懸念されると述べ、この変異株にはワクチンの効果が「きわめて低い」と説明した。
欧州ではフランスとポーランドが感染急増を受けて部分的ロックダウンを実施した。ドイツでも感染が急増中で、アンゲラ・メルケル首相は「緊急ブレーキ」としてロックダウン再開が必要になる可能性が高いと警告している。

変異株とワクチン
新型コロナウイルスは世界各地ですでに数千種類の変異株が、伝播(でんぱ)しているものの、特に最初に特定された3種類が、多くの国に広がり、注目されている。
- ブラジルで特定された「P.1」
- 南アフリカで特定された「B.1.351」
- イギリス・ケント州で特定された「B.1.1.7」
この3種類は他よりも感染力が高い可能性がある。また、他よりも特定しやすい可能性もある。ただし、感染した大多数の人においては、従来株より重症化するという証拠は得られていない。
現在、各国で使われているワクチンは従来株をもとに作られたもので、変異株に対しては効果が下がりつつも一定の効果はあると専門家は考えている。
現行のワクチンを変異株向けに改良・更新する作業も、すでに進んでいる。英政府は2月初め、製薬会社CureVacに、変異株に対応したワクチンを急ぎ開発するよう委託したと発表している。

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