フェリス女学院大文学部(横浜市泉区)の学生と教員が、上代(大和・奈良時代)から現代までの和歌・短歌から百首を選び、解説とイラストを添えたオリジナル版の「百人一首」を出版した。コロナ禍でオンライン会議を通じて意見を交わし、完成にこぎ着けた学生らは「時代を超えて受け継がれてきた和歌・短歌の魅力を伝えたい」と願う。 (杉戸祐子)
本のタイトルは「和歌・短歌のすすめ 新撰(しんせん)百人一首」(花鳥社)。日本語日本文学科の谷知子教授(61)が創立百五十周年の記念事業の一環として企画した。
未来に残したい作品を教員九人が選んだほか、学生から公募し、選歌を担う「フェリス和歌所(わかどころ)」を結成して教員と学生がオンラインで選定を進めた。詠まれている題材を確認し、スポーツ、沖縄など盛り込むべきだと話し合ったジャンルの作品を探して追加するなどし、二百首以上の候補から百首を選び出した。
最も古いのは「古事記」の作品。中古、中世、近世、近代と文学史上の時代を網羅しながら千年以上の時を超え、現代の歌人俵万智さん、米国出身の詩人アーサー・ビナードさん、「セーラー服を着た歌人」として知られる若手の鳥居さんらの作品を紹介している。
教員と学生三人で全作品に解説を添えた。平安時代の和泉式部の作品を選んだ四年の榎田百華さん(22)は、作品に詠まれた題材が現代の演歌の歌詞にも見られると記した。「平安時代の和歌が受け継がれていることを伝えられてうれしい。歌はいつの時代も人の心に寄り添ってきたと気付いた」と語る。
鎌倉幕府三代将軍の源実朝の作品を選んだ四年の栃原茅乃さん(22)は鎌倉で生まれ育った。「作品を通じて、実朝が鎌倉の地を真剣に守ろうとしていたことが分かる。弱腰な印象もある実朝の力強い為政者としての姿を伝えたい」と、解説に込めた思いを話す。
出版に向け、各作品の世界をビジュアルでも表現しようと、絵の得意な学生四人による「絵所(えどころ)」を設置。詠まれた風景を織り込んだ歌人の肖像が挿絵としてページを彩っている。大伴旅人、坂本龍馬らのイラストを描いた三年の佐藤真帆さん(21)は「学んでいる日本文学と好きな絵を結び付けたいという夢がかなった」と達成感を語る。
教員によるコラムもあり、人物像や時代背景、和歌・短歌の基礎知識が学べる内容になっている。谷教授は「和歌・短歌は約束ごとが多いと敬遠されがちだが、新たな感覚で思いを込めて選んだ百人一首を通じて距離を縮めてもらえたら」。近現代の作品の解説を担った島村輝教授(63)は「古代から現代まで通覧しながら、歌は思いのたけを述べる魅力的なものだと感じられる本になった」と話す。
千七百六十円。ネット販売サイト「アマゾン」などで購入可能。問い合わせは花鳥社=電03(6303)2505、フェリス女学院大企画・広報課=電045(812)9624=へ。
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