もし、認知症になったとき大事なのは、早期発見にはメリットがあるので、焦らないこと。また、認知症になってもつき合える人とやりたいことを見つけること。認知症と診断されたときに役立つ心構えを、東京慈恵会医科大学精神医学講座教授の繁田雅弘さんに聞いた。
診断がつかない「軽度認知障害」と指摘されても焦らないで。早期発見のメリットも!
「軽度認知障害」とは、もの忘れが増え、明らかに記憶力が低下しているのに、日常生活に支障はない状態のこと。認知症の初期段階のように聞こえるが、認知症かもしれないし、そうでないかもしれない、診断のつかない状態だ。 「体の病気や精神的な不調で、認知機能検査の成績が振るわなかったりするとこのように呼ばれますが、時間をおいて再検査した結果、異常なしになる人もいます。 中途半端な状態に戸惑う人も多いのですが、早期発見につながり、早く治療を始めてよい効果が期待できる人もいます。何より、認知症とともに生きるという意識に早い段階から切り替えられると、認知症を踏まえた新しい暮らしが余裕を持って始められます。 この先の人生をどう生きるか、延命を含めてどう死にたいか、いろいろ調べたり準備ができます。家族と相談して、こうしてほしいと希望を伝えたり、さまざまな対策を講じることもできるのです」(繁田先生) ●まわりもわかる認知機能の低下 【記憶障害】物事が覚えられない 【見当識障害】時間や場所、理由がわからなくなる 【言語障害】言葉が出づらくなる 【失行】日常的な動作ができなくなる 【失認】見たり聞いたりしたことの意味がわからなくなる 【実行機能障害】計画立てて順序よく物事を行うことができない
いざというとき役立つのは、「認知症になってもつき合える人」「認知症になってもやりたい趣味」
認知症になってもこれまでと継続した暮らしはできると繁田先生。そのために今からできる最良のことは、認知症になってもつき合える人間関係を築くことだ。 「認知症になってもその人の本質は変わらないし、人間の本質を見る人は、認知症になっても普通につき合ってくれます。信頼できる友だちを作っておけば、互いにとって安心ですよね。どちらが先に認知症になるかわかりませんから」 もうひとつは認知症になってもやりたいことを見つけておくこと。 「趣味でもいいし、維持したいライフスタイルでもいい。やりたいことがはっきりあると、まわりも協力しやすいんです。認知症に備えるということは、どう生きるかを問われるということです」 教えてくれた人 繁田雅弘さん 東京慈恵会医科大学精神医学講座教授。同大学付属病院精神神経科・メモリークリニック診療部長。症状よりも「人」を診ることをモットーとし、問診を重視した診療を行う。著書に『認知症の精神療法』(HOUSE出版)、監修『気持ちが楽になる認知症の家族との暮らし方』(池田書店) 写真/高橋ヨーコ 取材・原文/石丸久美子
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